『赤毛のアン』Ｌ・Ｍ・モンゴメリ著、 松本侑子訳、集英社文庫、840円 巻末訳注より抜粋

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第20章 （１）かえでの樹々も、真っ赤な芽をふき（P233）‥‥（略）、集英社文庫参照。 （２）メイフラワー（P233） ‥‥春が訪れ、五月に咲く花々全般をさすが、イギリスとアメリカ大陸では、花の種類が異なる。 カナダも含めたアメリカ大陸では、メイフラワーとは、主（おも）にトレイリング・アルバタスを意味する。 　日本には植生していないので和名はないが、ツツジ科のイワナシに似ている。 　高原や寒冷地に生（は）える高さ十五センチくらいの多年草で、茶色の葉の下に、五枚の花びらの香り高い花が咲く。 　今ではカナダでも数が減り保護指定種となっているので、残念ながらアンのようにつむことはできない。香りをかぐだけにしよう。 イギリスでメイフラワーと言えば、サンザシやキリンソウなどをさす。 （３）みんなそろってメイフラワーをつみにいき（P233）‥‥（略）、集英社文庫参照。 （４）「美しい花を、美しい乙女（おとめ）に」（P234） ‥‥シェイクスピア劇『ハムレット』第五幕第一場からの引用。 　ハムレットの恋人であるオフィーリアの亡骸（なきがら）に、デンマーク王妃（おうひ）が花を供（そな）えながらかける言葉。 　第5章で『ロミオとジュリエット』から引用された薔薇（ばら）の名前にちなむ一節と同じように、これもシェイクスピアのオリジナルではなく、さらに古い元歌があり、古代ローマの喜劇作家プラウトゥス（紀元前254？〜前184）の『ペルシャ人』の一節。 　ちなみに、シェイクスピアは『間違いの喜劇』を、このプラウトゥスの『メナエクムスの兄弟』を元に書いた。 （５）『丘の上のわが家』（P234） ‥‥Ｗ・Ｃ・ベイカー作詞作曲の歌（1866）。美しい景色に囲まれ、一緒に大きくなった木のある懐しのわが家を歌う歌。＊ （６）島には（中略）周りにせせらぎが流れているの（P237） ‥‥流れの中の小島と言えば、スコットの詩『湖上の麗人（れいじん）』でエレンが住んでいた島や、アルフレッド・テニスン（1809〜92）の詩『シャーロットの女』でシャーロットが住んでいた川の中の小島を連想させる。モンゴメリの好きそうな情景である。 　『シャーロットの女』については、第28章（10）参照。 （７）ヴィクトリア女王の誕生日（P237）‥‥（略）、集英社文庫参照。 （８）女王様への忠誠心はとても厚いの（P237） ‥‥アンがイギリス王室への忠誠心が厚いとことさらに言うのは、当然かもしれない。カスバート家が支持している保守党は大英帝国の一員としてのカナダ観を掲（かか）げ、どちらかと言えば反米親英的な政策を掲げていた。 　逆に、自由党は、独立戦争を経てイギリスから離れたアメリカとカナダの通商連合を政策とした。 　それに、そもそも、ルーシー・モード・モンゴメリのミドル・ネーム、モードとは、ヴィクトリア女王の娘、モード王女にちなんでつけられている。 （９）《お化けの森》（P239）‥‥（略）、集英社文庫参照。 ●この文章の著作権は、筆者・松本侑子に帰属します。 　無断転載は、著作権法で、厳しく禁止されています。 　論文、個人・法人のサイト等に引用される場合は、著作権法の規定にもとづき、 　「モンゴメリ著『赤毛のアン』（松本侑子訳、集英社文庫、2000年）より引用」 　と明記して下さい。
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