『赤毛のアン』Ｌ・Ｍ・モンゴメリ著、 松本侑子訳、集英社文庫、840円 巻末訳注より抜粋

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第14章 （１）白百合（マドンナ・リリー）（P142） ‥‥白百合は、聖母マリア、つまりマドンナの純潔と御霊（みたま）を表わす花とされ、中世以降、ダ・ヴィンチ、ボッティチェリなどによる受胎（じゅたい）告知を描いた絵では、大天使ガブリエルが必ず聖母に白百合を捧（ささ）げている。 　マドンナ・リリーの芳香が「神の祝福の精」のように漂った、と書かれていることから、アンの濡（ぬ）れ衣（ぎぬ）が晴れて、ピクニックに行けることが暗示されている。 （２）目に見えない風（P142）< ‥‥シェイクスピア劇の『尺には尺を』の第三幕一場「監獄の一室」という場面の一二四行「目に見えない風にとらわれて」にちなんでいる。 　『尺には尺を』でこの台詞を話すのは、罪にもならないような罪で監獄に閉じこめられたクローディオ。アンもまた濡れ衣で二階に閉じこめられている。 　クローディオは晴れて監獄から出て恋人と結婚というハッピーエンド。アンもまた誤解がとけて二階から出してもらえ、ピクニックへ行けることが、この風の引用からも暗示されている。＊ （３）すでに鋤（すき）に手をかけたのだから、もう後ろはふりかえりませんよ（P144） ‥‥新約聖書「ルカによる福音書（ふくいんしょ）」第九章六十二節に、次のように書かれている。 　「するとイエスは言われた。『誰（だれ）であろうと、鋤に手をかけてから後ろをふりかえる者は、神の王国にふさわしくない』」。 　マリラの台詞（せりふ）はこれからの引用で、一度始めたことを迷うのをいさめる内容。 　マリラは、神の王国にふさわしい人となるべく、どんなにアンの躾（しつけ）に手こずろうとも、もう後ろはふりかえらない、と言ったのだ。 （４）特に、ゆで豚と青菜を食べろだなんて言わないで（P145）‥‥（略）、集英社文庫参照。 （５）打ち上げ花火（ロケット）のように飛び上がった（P148）‥‥（略）、集英社文庫参照。 ●この文章の著作権は、筆者・松本侑子に帰属します。 　無断転載は、著作権法で、厳しく禁止されています。 　論文、個人・法人のサイト等に引用される場合は、著作権法の規定にもとづき、 　「モンゴメリ著『赤毛のアン』（松本侑子訳、集英社文庫、2000年）より引用」 　と明記して下さい。
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