『赤毛のアン』Ｌ・Ｍ・モンゴメリ著、 松本侑子訳、集英社文庫、840円 巻末訳注より抜粋

モットー		第1章		2	3	4	5	6	7	8	9	10	11	12	13	14	15	16	17	18
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第16章 （１）上座（かみざ）に着席して（P175） ‥‥欧米では、招いた側の女性が上座につく。 （２）木苺水（ラズベリー・コーデュアル）（P175） ‥‥木苺（ラズベリー）の果汁から作った濃厚なエキス。水で割って飲んだ。 　アンが間違えてダイアナに飲ませたスグリの果実酒（カラント・ワイン）も、マリラのお手製。 　木苺などのベリー類やスグリは、野に自生するものを、マリラやアンが摘（つ）む。 　カナダの野山の風情（ふぜい）が感じられる。 （３）船にじゃが芋（いも）を積みに出ているんだよ（P175） ‥‥じゃが芋は島の赤い土壌によく合い、現在も島の特産品となっている。 　船に積んでカナダ本土やアメリカに輸送し、1886年に開通したカナダ太平洋鉄道で各地に運ばれた。 （４）石筆をキーキー鳴らすから、ぞっとして血も凍りそうになるのよ（P177）‥‥（略）、集英社文庫参照。 （５）善をもって私の過ちに報（むく）いられているよう（P181） ‥‥原文を直訳すると、「頭の上に火のついた石炭を積む」となる。 　旧約聖書「箴言（しんげん）」第二十五章二十二節と、新約聖書「ローマ人への手紙」第十二章二十節からの引用。 　「もしあなたの敵が飢えたなら、彼に食べさせなさい。渇（かわ）いたなら、飲ませなさい。そうすることによって、あなたは彼の頭に燃える炭火を積むことになるのです」。 　「箴言」では「主があなたに報いられるでしょう」と続き、「ローマ人‥‥」では、「悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」と続く。 （６）スグリの果実酒（カラント・ワイン）（P184） ‥‥スグリは、英語ではカラント、フランス語ではカシスと言う。 　スグリはエキスにすると赤紫の色が美しく、うすめてジュースにしたり、アルコールにつけて果実酒にする。 　たとえばカクテルの「キール・ロワイヤル」はシャンパンにカシスエキスを加えた飲みもの。 （７）私のスグリ酒作りが気に喰（く）わない人たち（P185） ‥‥当時のカナダ社会では教会も婦人組織も禁酒運動を進めていた。 　この物語の舞台は1880年代から90年代頃と推定できるが、のちにプリンスエドワード島州政府は1900年代に禁酒法を制定し、酒類の販売を禁止した。 　マリラのように製造すること所持することは禁止していないが、社会的によしとしない風潮があったのだろう。 　今でも島では酒類販売の規制がある。＊ （８）運命の星は、私に味方してくれないのよ（P185） ‥‥ The stars in their courses fight against me, Mallira. 　この一節は、旧約聖書「士師記（ししき）」第五章二十節にもとづいている。 　They fought from heaven; the stars in their courses fought against Sisera. 　「もろもろの星は天から戦いに加わり、その軌道（きどう）からシセラと戦った。」 　天の星の配置までもがシセラという人物に不利に働いた、という意味であろう。 　天の星の運行までもが味方してくれなくてシセラが破れたように、アンもまた誤解されて、ダイアナとの仲を引き裂かれたのは、星までもが不運な動きをしていて味方してくれないからだ、と嘆いたという意味。◇ ●この文章の著作権は、筆者・松本侑子に帰属します。 　無断転載は、著作権法で、厳しく禁止されています。 　論文、個人・法人のサイト等に引用される場合は、著作権法の規定にもとづき、 　「モンゴメリ著『赤毛のアン』（松本侑子訳、集英社文庫、2000年）より引用」 　と明記して下さい。
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