[English]  2000.12.14更新

このライブラリーは、モンゴメリが「赤毛のアン」シリーズに引用した
英米詩の原文を、ご紹介するものです。
モンゴメリが愛読した詩集たち‥‥それを納めた彼女の本棚を、インターネットに再現してみました。
日本語の解説もつけましたので、どうぞお楽しみ下さい。
さらに詳しい解説は、「赤毛のアン」(集英社文庫・松本侑子訳)の巻末訳註、
または『赤毛のアンに隠された英米文学』をご覧下さい。

蔵書リスト
EVELYN HOPE by Robert Browning 訳/解説
 「エヴリン・ホープ」 ロバート・プラウニング作‥‥「赤毛のアン」の題辞に引用
COBBLER KEEZAR'S VISION by John Greenleaf Whittier 解説
 「靴職人キーザーの空想」 ジョン・グリーンリーフ・ホィッティアー作‥‥「赤毛のアン」第5章に引用
AMONG THE HILLS by John Greenleaf Whittier 解説
 「丘のふところにて」 ジョン・グリーンリーフ・ホィッティアー作‥‥『アンの青春』の題辞に引用
CURFEW MUST NOT RING TO-NIGHT by Rosa Hartwick Thorpe 訳/解説
 「晩鐘、今宵は鳴らすなかれ」 ローザ・ハートウィック・ソープ作‥‥「赤毛のアン」第19章に引用
The Maiden's Vow by Baroness Caroline Oliphant 訳/解説
 「乙女の誓い」 キャロライン・オリファント作‥‥「赤毛のアン」第34章に引用
NELLY OF THE HAZEL DELL  [楽譜] 訳/解説
 「はしばみ谷のネリー」 歌‥‥「赤毛のアン」第14章に登場
THE PALACE OF ART by Alfred Tennyson
 「芸術の宮殿」 アルフレッド・テニスン作‥‥「赤毛のアン」第38章に引用
PIPPA PASSES by Robert Browning 訳/解説
 「ピッパが通る」 ロバート・プラウニング作‥‥「赤毛のアン」第38章に引用
HOHENLINDEN by Thomas Campbell
 「ホーヘンリンデン」  トーマス・キャンベル作‥‥「赤毛のアン」第5章に登場
THE LADY GERALDINE 訳/解説
 「レディ・ジェラルディン」 サリー伯爵作‥‥「赤毛のアン」第3章に関連
MAIDENHOOD by Henry Wadsworth Longfellow
 「乙女」 ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー作‥‥「赤毛のアン」第31章のタイトルに引用
EDINBURGH AFTER FLODDEN by william Edmandstone Aytoun
 「フロッデン後のエジンバラ」 ウィリアム・エドモンドストーン・エイトン作‥‥「赤毛のアン」第5章に登場
LANCELOT AND ELAINE by Alfred Tennyson 解説
 「ランスロットとエレーン」 アルフレッド・テニスン作‥‥「赤毛のアン」第28章に、たくさん引用
THE VISION OF SIR LAUNFAL by James Russell Lowell
 「サー・ローンファルの夢想」 ジェームズ・ラッセル・ローウェル作 ‥‥「赤毛のアン」第2章に引用
TAM O' SHANTER by Robert Burns
 「タモ・シャンター」 ロバート・バーンズ作‥‥「赤毛のアン」第19章に関連
LINES ON POLAND by Thomas Campbell
 「ポーランドの陥落」 トーマス・キャンベル作‥‥「赤毛のアン」第5章に登場
MARMION by Sir Walter Scott  解説
MARY, QUEEN OF SCOTS by Henry Grassford Bell
 「スコットランド女王メアリ」 ヘンリー・グラスフォード・ベル作‥‥「赤毛のアン」第24章に登場、引用
THE FAIRY QUEEN by Bishop Thomas Percy
 「妖精の女王」 トーマス・パーシィ作‥‥「赤毛のアン」第24章に登場
MARS LA TOUR, OR, THE MAIDEN'S VOW by Stafford MacGregor
 「乙女の誓い」 スタッフォード・マクグレガー作‥‥「赤毛のアン」第34章に登場
HYMN TO THE NIGHT
FOR AN AUTOGRAPH
THE EXCURSION
THE SIEGE OF VALENCIA 解説
 「ヴァレンシアの包囲戦」 フェリシア・ドロシア・ヘマンズ作‥‥「赤毛のアン」第18章に引用
ELEGY WRITTEN IN A COUNTRY CHURCH-YARD 解説
 イギリスの詩人トーマス・グレイ(1716-1771)の代表作「田舎教会の墓地にて詠める哀歌」
HOW ZACKERY SET A HEN (HOW SOCKERY SET A HEN) 解説
 「ソケリーはいかにして雌鳥に卵を抱かせたか」 「赤毛のアン」第19章より
THE MORNING VISIT 解説
 「朝の往診」 オーリバー・ウェンデル・ホームズ‥‥「赤毛のアン」第23章より
NIGHT-SCENE IN GENOA 解説
 「ジェノヴァの夜景」 フェリシア・ドロテア・ヘマンズ作‥‥「赤毛のアン」第18章に引用

 

「モンゴメリ・デジタル・ライブラリー」に寄せて

松本侑子        


 私は『赤毛のアン』(モンゴメリ作・集英社文庫・800円)の新完訳本を出した。
 私の訳本では、作中に古い時代の英米文学作品から、多数、引用があることを解明している。
 たとえば、シェイクスピア劇からは「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「マクベス」など、イギリス文学からはバイロン、ブラウニング、テニスン、トムソン、キャンベル、ノートンなどによる詩、そしてアメリカ文学からはホィティアー、ロングフェロー、シガニーなどの詩の一節、そして聖書のさまざまな節も、『赤毛のアン』には、無数に引用されている。

 このサイト「赤毛のアン電子図書館」では、『赤毛のアン』に引用されている詩や戯曲の原典を、英語で紹介することを目的としたサイトである。
もっとも、シェイクスピア劇やテニスン作品など、現在でも有名な詩人による作品は、原文が容易に手にはいるので、このサイトでは、今ではあまり読まれなくなり、原書の入手が容易ではない作品を紹介したいと思う。
 これから少しずつ、掲載する作品数を増やしていく。また、日本語で解説も書いていくので、ぜひご覧下さい。

 その元になる原書は、私がイギリス、アメリカの図書館で探してコピーしたもの、あるいは海外の古書店で購入したものだ。
 古書をスキャナで読みとり、テキスト変換する作業も、私自身が行った。
 いずれの書籍も、前世紀以前に発行された古書であり、既に著作権は切れている。

 『赤毛のアン』の古風な一節が、誰の何という作品から引用されたのか、という出典探しは、主にコンピュータを使った。
 その具体的な方法は、『インターネット発見伝』(ジャストシステム刊・1800円)に詳しく書いたので、興味のある方は、そちらを参照して下さい。

 尚、私自身は、『赤毛のアン』に引用されている英文原書を大量に持っているものの、執筆に忙しく、原書をテキストデータに変換して、サイトに上げる時間があまり取れません。
 ボランティアでテキスト変換して下さる人を募集しています。
 自宅に、テキスト変換に対応したスキャナのある方は、メールでご連絡下さい
 変換のためのOCRソフトは、こちらでご用意します。

EVELYN HOPE

by Robert Browning


        I.

Beautiful Evelyn Hope is dead!
  Sit and watch by her side an hour.
That is her book-shelf, this her bed;
  She plucked that piece of geranium-flower,
Beginning to die too, in the glass;
  Little has yet been changed, I think:
The shutters are shut, no light may pass
Save two long rays thro' the hinge's chink.

        II.

Sixteen years old, when she died!
  Perhaps she had scarcely heard my name;
It was not her time to love; beside,
  Her life had many a hope and aim,
Duties enough and little cares,
  And now was quiet, now astir,
Till God's hand beckoned unawares,---
  And the sweet white brow is all of her.

        III.

Is it too late then, Evelyn Hope?
  What, your soul was pure and true,
The good stars met in your horoscope,
  Made you of spirit, fire and dew---
And, just because I was thrice as old
  And our paths in the world diverged so wide,
Each was nought to each, must I be told?
  We were fellow mortals, nought beside?

        IV.

No, indeed! for God above
  Is great to grant, as mighty to make,
And creates the love to reward the love:
  I claim you still, for my own love's sake!
Delayed it may be for more lives yet,
  Through worlds I shall traverse, not a few:
Much is to learn, much to forget
  Ere the time be come for taking you.

        V.

But the time will come,---at last it will,
  When, Evelyn Hope, what meant (I shall say)
In the lower earth, in  the  years  long  still,
  That body and soul so pure and gay?
Why your hair was amber, I shall divine,
  And your mouth of your own geranium's red---
And  what  you  would  do  with  me,  in   fine,
  In the new life come in the old one's stead.

        VI.

I have lived (I shall say) so much since then,
  Given up myself so many times,
Gained me the gains of various men,
  Ransacked the ages, spoiled the climes;
Yet one thing, one, in my soul's full scope,
  Either I missed or itself missed me:
And I want and find you, Evelyn Hope!
  What is the issue? let us see!

        VII.

I loved you, Evelyn, all the while.
  My heart seemed full as it could hold?
There was place and to spare for the frank young smile,
  And the red young mouth, and the hair's young gold.
So, hush,---I will give you this leaf to keep:
  See, I shut it inside the sweet cold hand!
There, that is our secret: go to sleep!
  You will wake, and remember, and understand.



 エヴリン・ホープ
                 ロバート・ブラウニング作


一、
 美しきエヴリン・ホープは逝(ルビ/い)ってしまった!
  しばしたたずむ、彼女の枕辺に
 あれは彼女の書棚、これは彼女の寝床
  彼女がつんだこのジェラニウムの花は
 早やくも枯れ始めている、ガラスのコップにさしたまま。でも
  彼女は少しも変わらない
 部屋の扉は閉ざされ、光も射さない
  ただ蝶番(ルビ/ちょうつがい)のすきまから、二すじの陽ざしがながくのびるだけ

二、
 彼女は逝ってしまった、わずか十六の若さで!
  彼女は私の名を聞いたこともないだろう
 まだ恋を知らない年ごろ。そして
  希望と抱負に満ちた乙女の人生
 若い娘としてすることは多々あり、しかし憂いはまだなく
  静かにくつろぎ、また活発に楽しんでいたのに
 神の手に召されてしまった、誰も知らない間に
  今や可憐な白い死顔がのこるのみ

三、  
  ああ、エヴリン・ホープ、私が恋心を告げるのが遅すぎたのか?
  君の魂はなんと清らかで美しいだろう
 あなたは良き星のもとに生まれ
  精と火と露から創られた
 しかし私は君より三倍も年老いた男で
  二人の人生の筋道は大きく離れていた
 私たちには何の関わりもなかった、そう言うべきであろうか?
  われらは死に引き裂かれる運命で、縁もゆかりもない他人だったのか?

四、
 いや、そんなことはない。天にまします神は
   恵み深く、全能である
 愛に報いる愛を創りたもうであろう
  だから君亡き今でも言わせてもらおう、君は私のものだと!
  これからいくつもの命を生まれ変わり
    少なからぬ幾世をこえて
 多くを覚え、多くを忘れ
  いつかまた君を私のものにするときが来るだろう

五、
 そのときが来たら、ついに来たなら
  エヴリン・ホープよ、私は君に言うだろう
 かつて下界にいたころ、はるか遠い昔に
  君は、身も心も美しくほがらかだったと
 君の髪は琥珀色(ルビ/こはくいろ)だったね、と私は言い当てるだろう
    君の唇は、このジェラニウムの花のように紅かったと
 そして君は、この私と何をするのだろう
  過去から新しく生まれ変わった人生で

六、
  私は君に話すだろう。あれから私がどんな風に生きてきたか
   何度も自分を見放し、あきらめてきたことを
 世の人の富を手に入れ
  君をさがそうと時代をかき回し、世間を台なしにして
 私の心は君への思慕で一杯なのに、それでもただ一つのものがないと気づいていた
  私はそのただ一つを恋い求めていたのか、それとも見つけられない喪失感が私を恋い求めていたのか
 エヴリン・ホープ、君がほしい、君を見つけたい!
  まためぐりあったなら、どんなに素晴らしいだろう!

七、
 エヴリン、君を愛している、いつもいつまでも
  君への想いでいっぱいの私の心にも
 君のうららかな若い笑顔
  紅く可愛い唇、金色のつややかな髪を覚えておく場所はある
 だからああ、この詩をかきつけた紙を持っていてくれ
  さあ、君の小さく冷たい手に持たせるよ!
 これは二人の秘密だ、さあ、やすらかに眠れ!
    いつか生まれ変わった君は、すべてを思い出し、知るだろう(松本侑子訳)

●解説

 『赤毛のアン』で、モンゴメリは、大長編の物語始める前に、まずは、モットー(題辞、題銘)として、次の二行を書いている。

 あなたは良き星のもとに生まれ、
 精と炎と露より創られた。
                  ブラウニング

 この詩の出典は、イギリスの詩人ロバート・ブラウニングの詩「エヴリン・ホープ」である。
 拙訳どではあるが、全文を訳してみた。
 この詩は、48歳の男性が、ひそかに恋していた16歳の少女の死を嘆き哀しんで、来世での再会と相思相愛を願う内容。

 冒頭に掲げられた一節は、まさにアンの性格をあらわすふさわしい美しい一節だ。
 引用元の詩では、美しい少女エヴリンの性格をあらわす言葉として書かれてい
る。

 モンゴメリは、この一節がアンらしさを見事に表すと考えて、物語のすべての始まりに、この二行をかかげたのである。
 こうして、良き星のもとに生まれたアンの物語が始まっていく‥‥。


COBBLER KEEZAR'S VISION

by John Greenleaf Whittier

This ballad was written on the occasicn of a Horticultural Festival. Cobbler Keezar was a noted character among the first settlers in the valley of the Merrimac.


THE beaver cut his timber
  With patient teeth that day,
The minks were fish-wards, and the crows
  Surveyors of highway, --

When Keezar sat on the hillside
  Upon his cobbler's form,
With a pan of coals on either hand
  To keep his waxed-ends warm.

And there, in the golden weather,
  He stitched and hammerd and sung;
In the brook he moistened his leather,
  In the pewter mug his tongue.

Well know the tough old Teuton.
  Who brewed the stoutest ale,
And he paid the goodwife's reckoning
  In the coin of song and tale.

The songs they still are singing
  Who dress the hills of vine,
The tales that haunt the Brocken
  And whisper down the Rhine.

Woodsy and wild and lonesome,
  The swift stream wound away,
Through birches and scarlet maples
  Flashing in foam and spray, --

Down on the sharp-horned ledges
  Plunging in steep cascade,
Tossing its white-maned waters
  Against the hemlock's shade.

Woodsy and wild and lonesome,
  East aud west_and north and south ;
Only the village of fishers
  Down at the river's mouth ;

Only here and there a clearing,
  With its farm-house rude and new,
And tree-stumps, swart as Indians,
  Where the scanty harvest grew.

No shout of home-bound reapers,
  No vintage-song he heard,
And on the green no dancing feet
  The merry violin stirred.

"Why should folk be glum," said Keezar
  " When Nature herself is glad,
And the painted woods are laughing
  At the faces so sour and sad ?"

Small heed had the careless cobbler
  What sorrow of heart was theirs
Who travailed in pain with the births of God,
  And plauted a state with prayers,--

Hunting of witchies and warlocks,
  Smiting the heathen horde,--
One hand on the mason's trowel,
  And one on the soldier's sword!

But give him his ale and cider,
  Give him his pipe and song,
Little he cared for Church or State,
  Or the balance of right and wrong.

"'Tis work, work, work," he muttered, --
  "And for rest a snuffle of psalms!"
He smote on his leathern apron
  With his brown and waxen palms.

"Oh for the purple harvests
  Of the days when I was young!
For the merry grape-stained maidens,
  And the pleasant songs they sung!

"Oh for the breath of vineyards,
  Of apples and nuts and wiee!
For an oar to row and a breeze to blow
  Down the grand old river Rhine!"

A tear in his blue eye glistened,
  And dropped on his beard so gray.
"Old, old am I," said Keezar,
  "And the Rhine flows far away!"

But a cuntling man was the cobbler;
  He could call the birds from the trees,
Charm the black snake out of the ledges,
  And bring back the swarming bees.

All the virtues of herbs and metals,
  All the lore of the woods, he knew,
And the arts of the Old World mingled
  With the marvels of the New.

Well he knew the tricks of magic,
  And the lapstone on his kllee
Had the gift of the Mormon's goggles
  Or the stone of Doctor Dee.

For the mighty master Agrippa
  Wronght it with spell and rhyme
From a fragment of mystic moonstone
  In the tower of Nettesheim

To a cobbler Minnesinger
  The marvellous stone gave he, --
And he gave it, in turn, to Keezar,
  Who brought it over the sea.

He held up that mystic lapstone,
  He held it up like a lens,
And he counted the long years coming
  By twenties and by tens.

"One hundred years," quoth Keezar,
  "And fifty have I told:
Now open the new before me,
  And shut me out the old!"

Like a cloud of mist, the blackness
  Rolled from the magic stone,
And a marvellous picture mingled
  The unknown and the known.

Still ran the stream to the river,
  And river and ocean joined;
And ther were the bluffs and the blue sealine,
  And cold north hills behind.

But the mighty forest was broken
  By many a steepled town,
By many a white-walled farm-house,
  And many a garner brown.

Turning a score of mill-wheels,
  The stream no more ran free;
White sails on the winding river,
  White sails on the far-off sea.

Below in the noisy village
  The flags were floating gay,
And shore on a thousand faces
  The light of a holiday.

Swiftly the rival ploughmen
  Turned the brown earth from their shares;
Here were the farmer's treasures,
  There were the craftsman's wares.

Golden the goodwife's butter
  Ruby her currant-wine;
Grand were the strutting turkeys,
  Fat were the beeves and swine.

Yellow and red were the apples,
  And the ripe pears russet-brown,
And the peaches had stolen blushes
  From the girls who shook them down.

And with blooms of hill and wildwood,
  That shame the toil of art,
Mingled the gorgeous blossoms
  Of the garden's tropic heart.

"What is it I see?" said Keezar:
  "Am I here, or am I there?
Is it a fete at Bingen?
  Do I look on Frankfort Fair?

"But where are the clowns and puppets,
  And imps with horns and tail?
And where are the Rhenish flagons?
  And where is the foaming ale?

"Strange things, I know, will happen,--
  Strange things the Load permits;
But that droughty folk should be jolly
  Puzzles my poor old wits.

"Here are smiling manly faces,
  And the maiden's step is gray;
Nor sad by thinking, nor mad by drinking,
  Nor mopes, nor fools, are they.

"Here's pleasure without regretting,
  And good without abuse,
The holiday and the bridal
  Of beauty and of use.

"Here's priest and there is a Quaker,
  Do the cat and dog agree?
Have they burned the stocks for ovenwood?
  Have they cut down the gallows-tree?

"Would the old folk know their children?
  Would they own the graceless town,
With never a ranter to worry
  And never a witch to drown?"

Loud laughed the cobbler Keezar,
  Laughed like a school-boy gay;
Tossing his arms above him,
  The lapstone rolled away.

It rolled down the rugged hillside,
  It spun like a wheel bewitched,
It plunged through the leaning willows,
  And into the river pitched.

There, in the deep, dark water,
  The magic stone lies still,
Under the leaning willows
  In the shadow of the hill.

But oft the idle fisher
  Sits on the shadowy bank,
And his dreams make marvellous pintures
  Where the wizard's lapstone sank.

And still, in the summer twilights
  When the river seems to run
Out from the inner glory,
  Warm with the melted sun,

The weary mill-girl lingers
  Beside the charmed stream,
And the sky and the golden water
  Shape and color her dream.

Fair wave the sunset gardens,
  The rosy signals fly;
Her homestead beckons from the cloud,
  And love goes sailing by.

解説
 アメリカの詩人ジョン・グリーンリーフ・ホィティアーの詩「コブラー・キーザーズ・ビジョン」
 この詩の第6節と第8節にある、 woody and wild and lonesome が、「赤毛のアン」第5章に引用されている。

 「赤毛のアン」の原文では、
”The shore road was woody and wild and lonesome.”
 日本語訳は、「海岸通りは、深い緑に木がしげり、荒れ果て、心寂しい感じだった。」となる。

 この文章が出てくるのは、『アン』第5章「アンの生い立ち」だ。
 グリーン・ゲイブルズのマリラ・カスバートは、孤児院に男の子を頼んでいたが、間違って女の子のアンがやってくる。そこでアンを連れ戻しに馬車で海沿いを行く。
 プリンスエドワード島北部の侘びしい海岸通りを、マリラとアンが馬車で行く風景が描写されるところで、この一節は出てくる。
 この引用出典は、トロントの公共図書館員の梶原由佳さんに提供していただいたカナダの児童文学研究誌「CCL」を参照した。
 また、この詩の原文そのものは、アメリカ、カリフォルニア州立図書館で「ホィティアー全集」の該当ページからコピーして入手した。

 ジョン・グリーンリーフ・ホィティアーの詩は、シリーズ第2巻『アンの青春』の冒頭にも使われている。それは、長文詩「Among the Hills」だ。
 その詩「Among the Hills」の原文は、カリフォルニア州立の図書館で入手した。開拓時代のアメリカの山間部で木訥な農夫と街の娘が出会って結婚し理想的な夫婦となる作品。
 今、やっと翻訳が終わったところです(詩の翻訳はムズカシー)。97年秋には、テキスト化して、ここにアップして解説できると思います。(ゆ)

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AMONG THE HILLS

by John Greenleaf Whittier



For weeks the clouds had raked the hill's
  And vexed the vales with raining,
And all the woods were sad with mist,
  And all the brooks complaining.

At last, a sudden night-storm tore
  The mountain veils asunder,
And swept the valleys clean before
  The besom of the thunder.

Through Sandwich notch the west-wind sang
  Good morrow to the cotter;
And once again Chocorua's horn
  Of shadow pierced the water.

Above his broad lake Ossipee,
  Once more the sunshine wearing,
Stooped, tracing on that silver shield
  His grim armorial bearing.

Clear drawn against the hard blue sky,
  The peaks had winter's keenness;
And, close on autumn's frost, the vales
  Had more than June's fresh greenness.

Again the sodden forest floors
  With golden lights were checkered,
Once more rejoicing leaves in wind
  And sunshine danced and flickered.

It was as if the summer's late
  Atoning for its sadness
Had borrowed every season's charm
  To end its days in gladness.

I call to mind those banded vales
  Of shadow and of shining,
Through which, my hostess at my side,
  I drove in day's declining.

We held our sideling way above
  The river's whitening shallows,
By homesteads old, with wide-flung barns
  Swept through and through by swallows;

By maple orchards, belts of pine
  And larches climbing darkly
The mountain slopes, and, over all,
  The great peaks rising starkly.

You should have seen that long hill-range
  With gaps of brightness riven, --
How through each pass and hollow streamed
  The purpling lights of heaven, --

Rivers of gold-mist flowing down
  From far celestial fountains, --
The great sun flaming through the rifts
  Beyond the wall of mountains!

We paused at last where home-bound cows
  Brought down the pasture's treasure,
And in the barn the rhythmic flails
  Beat out a harvest measure.

We heard the night-hawk's sullen plunge,
  The crow his tree-mates calling:
The shadows lengthening down the slopes
  About our feet were falling.

And through them smote the level sun
  In broken lines of splendor,
Touched the gray rocks and made the green
  Of the shorn grass more tender.

The maples bending o'er the gate,
  Their arch of leaves just tinted
With yellow warmth, the golden glow
  Of coming autumn hinted.

Keen white between the farm-house showed,
  And smiled on porch and trellis,
The fair democracy of flowers
  That equals cot and palace.

And weaving garlands for her dog,
  'Twixt chidings and caresses,
A human flower of childhood shook
  The sunshine from her tresses.

On either hand we saw the signs
  Of fancy and of shrewdness,
Where taste had wound its arms of vines
  Round thrift's uncomely rudeness.

The sun-brown farmer in his frock
  Shook hands, and called to Mary:
Bare-armed, as Juno might, she came,
  White-aproned from her dairy.

Her air, her smile, her motions, told
  Of womanly completeness;
A music as of household songs
  Was in her voice of sweetness.

Not fair alone in curve and line,
  But something more and better,
The secret charm eluding art,
  Its spirit, not its letter: --

An inborn grace that nothing lacked
  Of culture or appliance, --
The warmth of genial courtesy,
  The calm of self-reliance.

Before her queenly womanhood
  How dared our hostess utter
The paltry errand of her need
  To buy her fresh-churned butter?

She led the way with housewife pride,
  Her goodly store disclosing,
Full tenderly the golden balls
  With practised hands disposing.

Then, while along the western hills
  We watched the changeful glory
Of sunset, on our homeward way,
  I heard her simple story.

The early crickets sang; the stream
  Plashed through my friend's narration:
Her rustic patois of the hills
  Lost in my free translation.

"More wise," she said, "than those who swarm
  Our hills in middle summer,
She came, when June's first roses blow,
  To greet the early comer.

"From school and ball and rout she came,
  The city's fair, pale daughter,
To drink the wine of mountain air
  Beside the Bearcamp Water.

"Her step grew firmer on the hills
  That watch our homesteads over;
On cheek and lip, from summer fields,
  She caught the bloom of clover.

"For health comes sparkling in the streams
  From cool Chocorua stealing:
There's iron in our Northern winds;
  Our pines are trees of healing.

"She sat beneath the broad-armed elms
  That skirt the mowing meadow,
And watched the gentle west-wind weave
  The grass with shine and shadow.

"Beside her, from the summer heat
  To share her grateful screening,
With forehead bared, the farmer stood,
  Upon his pitchfork leaning.

"Framed in its damp, dark locks, his face
  Had nothing mean or common, --
Strong, manly, true, the tenderness
  And pride beloved of woman.

"She looked up, glowing with the health
  The country air had brought her,
And, laughing said: 'You lack a wife,
  Your mother lacks a daughter.

" 'To mend your frock and bake your bread
  You do not need a lady:
Be sure among these brown old homes
  Is some one waiting ready, --

" 'Some fair, sweet girl with skilful hand
  And cheerful heart for treasure,
Who never played with ivory keys,
  Or danced the polka's measure.'

"He bent his black brows to a frown,
  He set his white teeth tightly.
' 'T is well,' he said, 'for one like you
  To choose for me so lightly.

" 'You think because my life is rude
  I take no note of sweetness:
I tell you love has naught to do
  With meetness or unmeetness.

" 'Itself its best excuse, it asks
  No leave of pride or fashion
When silken zone or homespun frock
  It stirs with throbs of passion.

" 'You think me deaf and blind: you bring
  Your winning graces hither
As free as if from cradle-time
  We two bad played together.

" 'You tempt me with your laughing eyes,
  Your cheek of sundown's blushes,
A motion as of waving grain,
  A music as of thrushes.

" 'The plaything of your summer sport,
  The spells you weave around me
You cannot at your will undo,
  Nor leave me as you found me.

" 'You go as lightly as you came,
  Your life is well without me;
What care you that these hills will close
  Like prison-walls about me?

" 'No mood is mine to seek a wife,
  Or daughter for my mother:
Who loves you loses in that love
  All power to love another!

" 'I dare your pity or your scorn,
  With pride your own exceeding;
I fling my heart into your lap
  Without a word of pleading.'

"She looked up in his face of pain
  So archly, yet so tender:
'And if I lend you mine,' she said,
  'Will you forgive the lender?

" 'Nor frock nor tan can hide the man;
  And see you not, my farmer,
How weak and fond a woman waits
  Behind the silken armor?

" 'I love you: on that love alone,
  And not my worth presuming,
Will you not trust for summer fruit
  The tree in May-day blooming?'

"Alone the hangbird overhead,
  His hair-swung cradle straining,
Looked down to see love's miracle, --
  The giving that is gaining.

"And so the farmer found a wife,
  His mother found a daughter:
There looks no happier home than hers
  On pleasant Bearcamp Water.

"Flowers spring to blossom where she walks
  The careful ways of duty;
Our hard, stiff lines of life with her
  Are flowing curves of beauty.

"Our homes are cheerier for her sake,
  Our door-yards brighter blooming,
And all about the social air
  Is sweeter for her coming.

"Unspoken homilies of peace
  Her daily life is preaching;
The still refreshment of the dew
  'Is her unconscious teaching.

"And never tenderer hand than hers
  Unknits the brow of ailing;
Her garments to the sick man's ear
  Have music in their trailing.

"And when, in pleasant harvest moons;
  The youthful huskers gather,
Or sleigh-drives on the mountain ways
  Defy the winter weather, --

"In sugar-camps, when south and warm
  The winds of March are blowing,
And sweetly from its thawing veins
  The maple's blood is flowing, --

"In summer, where some lilied pond
  Its virgin zone is baring,
Or where the ruddy autumn fire
  Lights up the apple-paring, --

"The coarseness of a ruder time
  Her finer mirth displaces,
A subtler sense of pleasure fills
  Each rustic sport she graces.

"Her presence lends its warmth and health
  To all who come before it.
If woman lost us Eden, such
  As she alone restore it.

"For larger life and wiser aims
  The farmer is her debtor;
Who holds to his another's heart
  Must needs be worse or better.

"Through her his civic service shows
  A purer-toned ambition;
No double consciousness divides
  The man and politician.

"In party's doubtful ways he trusts
  Her instincts to determine ;
At the loud polls, the thought of her
  Recalls Christ's Mountain Sermon.

"He owns her logic of the heart,
  And wisdom of unreason,
Supplying, while he doubts and weighs,
  The needed word in season.

"He sees with pride her richer thought,
  Her fancy's freer ranges;
And love thus deepened to respect
  Is proof against all changes.

"And if she walks at ease in ways
  His feet are slow to travel,
And if she reads with cultured eyes
  What his may scarce unravel,

"Still clearer, for her keener sight
  Of beauty and of wonder,
He learns the meaning of the hills
  He dwelt from childhood under.

"And higher, warmed with summer lights,
  Or winter-crowned and hoary,
The ridged horizon lifts for him
  Its inner veils of glory.

"He has his own free, bookless lore,
  The lessons nature taught him,
The wisdom which the woods and hills
  And toiling men have brought him:

"The steady force of will whereby
  Her flexile grace seems sweeter;
The sturdy counterpoise which makes
  Her woman's life completer;

"A latent fire of soul which lacks
  No breath of love to fan it;
And wit, that, like his native brooks,
  Plays over solid granite.

"How dwarfed against his manliness
  She sees the poor pretension,
The wants, the aims, the follies, born
  Of fashion and convention!

"How life behind its accidents
  Stands strong and self-sustaining,
The human fact transcending all
  The losing and the gaining.

"And so in grateful interchange
  Of teacher and of hearer,
Their lives their true distinctness keep
  While daily drawing nearer.

"And if the husband or the wife
  In home's strong light discovers
Such slight defaults as failed to meet
  The blinded eyes of lovers,

"Why need we care to ask? - Who dreams
  Without their thorns of roses,
Or wonders that the truest steel
  The readiest spark discloses?

"For still in mutual sufferance lies
  The secret of true living;
Love scarce is love that never knows
  The sweetness of forgiving.

"We send the Squire to General Court,
  He takes his young wife thither;
No pronder man election day
  Rides through the sweet June weather.

"He sees with eyes of manly trust
  All hearts to her inclining;
Not less for him his household light
  That others share its shining."

Thus, while my hostess spake, there grew
  Before me, warmer tinted
And outlined with a tenderer grace,
  The picture that she hinted.

The sunset smouldered as we drove
  Beneath the deep hill-shadows.
Below us wreaths of white fog walked
  Like ghosts the haunted meadows.

Sounding the summer night, the stars
  Dropped down their golden plummets;
The pale are of the Northern lights
  Rose o'er the mountain summits,

Until, at last, beneath its bridge,
 We heard the Bearcamp flowing,
And saw across the mapled lawn
  The welcome horm-lights glowing.

And, musing on the tale I heard,
  'T were well, thought I, if often
To rugged farm-life came the gift
  To harmonize and soften;

If more and more we found the troth
  Of fact and fancy plighted,
And culture's charm and labor's strength
  In rural homes united, --

The simple life, the homely hearth,
  With beauty's sphere surrounding,
And blessing toil where toil abounds
  With graces more abounding.

解説
 テキスト化のボランティアを、このサイト上で募集していたところ、山口政幸様から、お申し出を頂きました! どうもありがとうございます。

 この詩、ホィティアー作「アマング・ザ・ヒルズ」は、山口様に、テキスト化して頂きました。原文は、カリフォルニア州ニューポートビーチ公共図書館でコピーして、入手しました。


*               *              *


 この詩は、『赤毛のアン』シリーズ第2作『アンの青春』の冒頭にモットーとして引用、掲載されている。

 それは、この詩の第52節の4行だ。


 彼女の歩いたあとには花々が咲きひろがる
 日々の勤めを果たして注意深く歩いていく道に。
 しっかりとして、着実な彼女の人生の筋道には
 美(文化、洗練)の曲線もまた豊かに流れている。


 という部分だ。

 この詩の中の「彼女」とは、街から丘陵地帯の田舎へやってきて、農夫と結婚する女性だ。
 彼女は美しいだけでなく、賢くて教養があり、優しく、そして堅実で、イヴの愚かさゆえに人間が神から取り上げられた楽園を蘇らせるのは、「彼女」しかいない、とまでこの詩に書かれているような理想的な女性だ。


 そしてこの詩のテーマは、私の読む限りでは、「彼女」の美が象徴する洗練、教養、文化といったものと、田舎の農夫が象徴するたくましさ、労働、木訥さの幸福な融合、幸福な結婚であると思う。

 『アンの青春』の冒頭に、この詩が掲げられている理由を考えてみた。
 それは、第2巻でのアンが、この「彼女」のような賢さと美しさ、優しさ、堅実さをそなえた人物を理想として成長していく、ということを示唆する意味合いで、この詩が掲げられているのではないだろうか。

 従来の日本語訳の文庫本では、こうしたモットーがほとんど掲載されていないが、アン・シリーズには、必ず冒頭に詩の一節が掲げられている。
 ちなみに、第1巻の『赤毛のアン』の冒頭には、イギリス浪漫派の詩人ロバート・ブラウニングの詩「エヴリン・ホープ」の一節が引用されている。拙訳では、紹介しているので、ぜひご覧頂きたい。
 ここでも、この詩の原文をご紹介しようと思う。(ゆうこ)

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CURFEW MUST NOT RING TO-NIGHT

by Rosa Hartwick Thorpe



Slowly England's sun was setting oe'r the hilltops far away,
  Filling all the land with beauty at the close of one sad day;
And its last rays kissed the forehead of a man and maiden fair,--
  He with steps so slow and weary; she with sunny, floating hair;
He with bowed head, sad and thoughtful, she, with lips all cold and white,
  Struggling to keep back the murmur, "Curfew must not ring to-night!"

"Sexton," Bessie's white lips faltered, pointing to the prison old,
  With its walls tall and gloomy, moss-grown walls dark, damp and cold,--
"I've a lover in the prison, doomed this very night to die
  At the ringing of the curfew, and no earthly help is nigh.
Cromwell will not come till sunset;" and her lips grew strangely white,
  As she spoke in husky whispers, "Curfew must not ring to-night!"

"Bessie," calmly spoke the sexton (every word pierced her young heart
  Like a gleaming death-winged arrow, like a deadly poisoned dart),
"Long, long years I've rung the curfew from that gloomy, shadowed tower;
  Every evening, just at sunset, it has tolled the twilight hour.
I have done my duty ever, tried to do it just and right:
  Now I'm old, I will not miss it. Curfew bell must ring to-night!"

Wild her eyes and pale her features, stern and white her thoughtful brow,
  As within her secret bosom, Bessie made a solemn vow.
She had listened while the judges read, without a tear or sigh,
  "At the ringing of the curfew, Basil Underwood must "die.
And her breath came fast and faster, and her eyes grew large and bright;
  One low murmur, faintly spoken. "Curfew must not ring to-night!"

She with quick step bounded forward, sprang within the old church-door,
  Left the old man coming slowly, paths he'd trod so oft before.
Not one moment paused the maiden, But with eye and cheek aglow,
  Staggered up the gloomy tower, Where the bell swung to and fro;
As she climbed the slimy ladder, On which fell no ray of light,
  Upward still, her pale lips saying, "Curfew shall not ring to-night!"

She has reached the topmost ladder, o'er her hangs the great dark bell;
  Awful is the gloom beneath her, like the pathway down to hell.
See! the ponderous tongue is swinging; 'tis the hour of curfew now,
  And the sight has chilled her bosom, stopped her breath, and paled her brow.
Shall she let it ring? No, never! Her eyes flash with sudden light,
  As she springs, and grasps it firmly: "Curfew shall not ring to-night!"

Out she swung,-- far out. The city Seemed a speck of light below,--
  There twixt heaven and earth suspended, As the bell swung to and fro.
And the sexton at the bell-rope, old and deaf, heard not the bell,
  Sadly thought that twilight curfew rang young Basil's funeral knell.
"Still the maiden, clinging firmly, quivering lip and fair face white,
  Stilled her frightened heart's wild throbbing: "Curfew shall not ring tonight!"

It was o'er, the bell ceased swaying; and the maiden stepped once more
  Firmly on the damp old ladder, where, for hundred years before,
Human foot had not been planted. The brave deed that she had done
  Should be told long ages after. As the rays of setting sun
Light the sky with golden beauty, aged sires, with heads of white,
  Tell the children why the curfew did not ring that one sad night.

O'er the distant hills comes Cromwell. Bessie sees him; and her brow,
  Lately white with sickening horror, has no anxious traces now.
At his feet she tells her story, shows her hands, all bruised and torn;
  And her sweet young face, still hagggard, with the anguish it had worn,
Touched his heart with sudden pity, lit his eyes with misty light.
  "Go! your lover lives," said Cromwell. "Curfew shall not ring to-night!"

Wide they flung the massive portals, led the prisoner forth to die,
  All his bright young life before him. Neath the darkening English sky,
Bessie came, with flying footsteps, eyes aglow with lovelight sweet;
  Kneeling on the turf beside him, laid his pardon at his feet.
In his brave, strong arms he clasped her, kissed the face upturned and white,
  Whispered, "Darling, you have saved me, curfew will not ring to-night."


「晩鐘、今宵は鳴らすなかれ」

                       ローズ・ハートウィック・ソープ作
                       

イングランドの夕陽が、遠くかなたの丘のむこうへ、ゆっくりと沈んでいく
悲しい一日の終わりをむかえて、あたり一面は美しさに満ちている
西日の最後の光が、一人の男と娘の顔をてらす
男は、のろのろと弱々しい足どりで歩く、娘の髪は輝くように豊かに流れる
男は、悲しく物憂げにうつむき、そして娘の唇は冷たく、血の気が失せている
まるで、つぶやきそうになるのをこらえるように、「晩鐘、今宵は鳴らすなかれ」と

「鐘つきのおじさん」、ベシーは青ざめた唇でどもりながら、古い牢獄を指さして声をかけた
牢獄は、高くて陰気な塀に囲まれていた。塀の壁は苔むして暗く、しめって冷たい
「この牢屋に、私の恋人がいるんです。まさに今夜、恋人は死刑になる
今夜、晩鐘が鳴ったその時に。命が助かる見こみは全然ないのです
クロムウェルは、日が暮れるまでは来ないでしょうし」
その唇は、恐ろしいほど真っ白になった
彼女がかすれた声でささやいたとき、「晩鐘、今宵は鳴らすなかれ」と

「ベシーや」鐘つきの男は、娘に穏やかに話しかけた、その一語一語は、娘の無垢な心をつき刺した
まるできらきら輝く矢が死をもたらしにひゅっと飛んできたように、まるで猛毒を塗った槍が飛んできたように
「ずっと長い間、わしは晩鐘を鳴らしてきたものさ。あの陰気で暗い塔の鐘をな
毎晩、ちょうど日が沈むこころ、日くれをみんなに告げる鐘を鳴らしてきたのさ
わしはいつだって自分の仕事をきっちりやってきた、少しの狂いもないよう心がけてきたんだよ
今は年をとってしまったが、しかし、打ち間違うなんてことはできんのだ。晩鐘は、今宵も鳴らさねばなるまいよ!」

娘の眼ざしはうろたえ、顔はまっ青になったが、思慮深そうな面ざしは、断固とし、毅然としていた
というのは、ベシーは、心の底でひそかに、おごそかなる誓いをたてていたのだ
裁判官が、恋人に死の判決を告げたとき、娘は涙もため息も見せなかった
「晩鐘が鳴るその時、ベイジル・アンダーウッドは死ななければならない」
娘の息づかいは早くなり、目は大きく開かれ、強く輝いた
娘はただ一言、消えいりそうな声で低くつぶやく、「晩鐘、今宵は鳴らすなかれ」

娘は走っていき、鐘のある古い教会へと駆けこんだ
とぼとぼとゆっくり歩く鐘突きの老人を追い越す、老人がいつも歩いた通路を
乙女は、一瞬たりとも立ち止まらなかった、目も頬も、燃えるように輝やかせて
じめじめした塔をよろけながら昇った、この塔の上で、鐘が前後にゆれるのだ
娘は、泥でぬるぬるした梯子をよじ昇った、一筋の光もささない暗闇の中を
昇っている時でさえも、娘の青ざめた唇はくり返していた、「晩鐘、今宵は鳴らさせるものか」

梯子のてっぺんにたどり着くと、頭上には、大きな鐘が、黒々とつり下がっていた
下を見ると、まっ暗で恐ろしいほどだ、まるで地獄の底へ落ちていく道のようだ
ああ大変! 鐘のふり子が、重々しくゆれ始めたではないか。ちょうど晩鐘が鳴る時間だ
ふり子が動き出したのを見ると、娘の心は凍りつき、息は止まり、真っ青になった
このまま鐘を鳴らせてしまうのか? いや、そんなことはさせない! 娘の瞳がきっと光った
彼女は鐘のふり子に飛びつき、しっかりとつかまった、「晩鐘、今宵は鳴らすものか!」

娘はふり子と一緒に大きくふりまわされた、眼下には、街のあかりが小さな点のように見える
鐘が右へ左へとゆれる間中、娘は天と地の間にぶら下がっていた
ふり子を揺らす綱の端は、鐘つきの男が握っていた、しかし男は年老いて耳が遠く、鐘の音は聞こえていなかった
老人は、今宵のこの鐘は、うら若い青年ベイジルの弔いの鐘になるのだと悲しく思いながら、ただ綱をゆすっていた
けれどその時、娘は、ふり子にしっかとしがみついていた、唇をふるわせ、美しい顔を真っ青にして
こわくて破れんばかりの心臓の鼓動をしずめるように、娘は言った、「晩鐘、今宵は鳴らさせるものか」

やっとのことで、揺れ動いていた鐘は止まった。娘は、汚れた古い梯子にもどり
たしかに足をつけた、梯子は百年も前からここにかけてあるが
まだ誰も昇ったことはなかった。こうして、娘が勇敢な行動をなし遂げたことは
後々まで語り継がれるだろう。西日が
美しい金色の光を空に投げかけるころ、髪が白くなった家の年よりたちが
子どもたちに話して聞かせるだろう。ある悲しい晩に、晩鐘が鳴らなかったことがあったのさ、と

遠くの丘を越えて、クロムウェルがやって来た。ベシーはクロムウェルに、ゆき会った
娘はまだ恐ろしさに青ざめていたが、その顔には、死の危機を切りぬけた安堵があった
娘はクロムウェルの足元にひづまづき、自分のしたことを話した、打ち傷と切り傷だらけの両手を見せて
若くかわいい娘の表情には、今日まで恋人の死を嘆き、苦悩しつづけたやつれが、まだ影を落としていた
それを見るとクロムウェルは、急に憐憫の情におそわれ、目はおぼろげにうるんで光った
「さあ、行くがよい! お前の恋人は生きている」クロムウェルは高らかに言った、「晩鐘、今宵は鳴らさせまいぞ」

頑丈な牢屋の扉がひらいて、死ぬはずだった囚人がひきずり出された
男の前には、若々しく輝かしい人生が広がっていた。くれゆくイングランドの空の下を
ベシーは飛ぶように走った、いとしい恋人へ愛の光で、瞳をきらきらさせて
娘は彼のそばの芝生にひざまづき、大赦になったと告げた
若者は、たくましく強い腕に娘を抱きしめ、上をむいた白い顔に口づけ
ささやいた、「愛しい人よ、君が僕の命を救った、晩鐘、今宵は鳴らないのだ」

                                    (松本侑子訳)


●解説
 この詩は、『赤毛のアン』第19章である「演芸会、悲劇、そして告白」という章に登場する。
 引用されているのは、詩の第5節にある「泥でぬるぬるした梯子をよじ登った、一筋の光もささない暗闇の中を」という部分だ。

 演芸会で詩の朗読をするためにステージに上がった女の子が「泥でぬるぬるした梯子をよじ登った、一筋の光もささない暗闇の中を」と、『赤毛のアン』には書かれている。

 翻訳をしていた時は、演芸会のステージに上がる梯子が、どうして泥でぬるぬるするほど汚れているのか、しかもなぜ辺りが真っ暗なのか疑問に思って訳し方に悩んだが、それは、つまりは引用だから辻褄があわないのだ。
 この引用も、出典元は書かれていない。
 しかし、無理をしてそんな不自然な引用をするからには、引用出典は、この女の子が朗読する詩「晩鐘、今宵は鳴らすなかれ」の一節ではないかと思った。
 日本国内では、詩の原文が見つからず、94年春にハーバード大学のワイドナー図書館へ行って探した。
 詩の作者名は分からなかったが、幸い、この詩が一作だけで一冊の本になっていたので、書名検索で探し出すことができた。
 出てきたのは、実に美しい本だった。作者は、ローズ・ハートウィック・ソープという19世紀のアメリカ詩人だった。
 短い詩だが、全ページに繊細な絵を入れた、エレガントな愛蔵版の本に仕立ててあった。当時のすてきな女性が読む様を思って、うっとりした。機会があれば、このイラストや表紙も、ここにアップしたいと思います。
 すぐに詩を読むと、予想していたとおり、探していた一節が見つかり、とても嬉しかった。

 死刑になる恋人の命を救うために、死刑執行の合図となる晩鐘を鳴らすまいと、必死で鐘の振り子(鐘のなかに下がっている棒)にしがみつく乙女の純真さが、よく出ている作品だ。
 クロムウェルと言えば、イギリスのイーリーの大聖堂へ行ったとき、このオリバー・クロムウェルが暮らした住居が教会の敷地内にあり、見てきた。ということは、この詩に出てくる牢獄とは、どこにあったのでしょうか? 実話に基づいたお話なのかしら?(ゆうこ)

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The Maiden's Vow

by Baroness caroline Nairne Oliphant

1766-1845


I've made a vow, I'll keep it true,
  I'll never married be;
For the only ane that I think on
  will never think o'me.

Noe gane to a far distant shore,
  Their face nae mair I'll see;
But often will I think o'them,
  That winna think o'me.

Gae owre, gae owre noo, gude Sir John,
  Oh, dinna follow me;
For the only ane I ere thocht on,
  Lies burried in the sea.


「乙女の誓い」 
                             キャロライン・ネアン・オリファント
                            (試訳)松本侑子

私は誓ったの、 きっと守り抜くでしょう
 決して結婚しないと
なぜなら、愛するただ一人のあの人は
 決して私を想うことはないから

今はもはや遙かな国へ船出した
 あの人たちに会うことはないでしょう
されど私はしげく思い出すでしょう
 私を想うことのないあの人たちを

向こうへ行って、離れて、優しいジョン、
 どうか私を追わないで
なぜなら、私が愛したたった一人のあの人は
 海の墓場に沈んだのだから
●この詩「乙女の誓い」は、
 『赤毛のアン』第33章「ホテルの演芸会」で、アンが暗唱して喝采を浴びる詩として、
 そして第34章「クィーン学院の女子学生」では、アンがマリラとマシューに暗誦して聞かせる詩として、
 登場しています。

 原文は、1996年に、ロンドンの英国図書館で入手しました。”Songs of Lady Nairne”Page 60 より
 作者オリファントは、18世紀スコットランドの女性詩人で、ネアン男爵夫人。 

 詩にはスコットランドの古語が多用されています。

 アンは、『赤毛のアン』で、スコットランド文学を愛読していると書いてあり、
 また、スコットランド系ですから、
 スコットランド語の響き(とくに独特なRの発音)を利かせて上手に発音して、詩を暗誦しただと思います。

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NELLY OF THE HAZEL DELL



In the Hazel Dell my Nelly's sleeping,
Nelly lov'd so long!
And my lonely watch I'm nightly keeping, 
Nelly, lost and gone. 
Here in moonlight often we have wander'd 
Thro' the silent glade;
Now where leafy branches all point downward; 
Litlle NelIy's laid. 
All alone my watch I'm keeping 
In the Hazel Dell, 
For my darling Nelly's near me sleeping.
Nelly, dear,farewell.


「はしばみ谷のネリー」
                 作詞者不明
                (試訳)松本侑子

はしばみ谷のネリー 死の眠りについた、
愛したネリー さようなら!
私はひとり 通夜に寝ずの番をする
喪われ、あの世へ逝ったネリー。
月の光を浴びて、私たちは彷徨ったのに
閑かな林を抜けて。
今や、葉のおい茂る枝もみなうなだれ
その地面に小さなネリーが横たわる。
私はたったひとり、夜通しネリーを見守る
このはしばみ谷で。
かわいいネリーは、私の傍らで眠っているのだから。
ネリー、いとしい人よ、さらば。

★『赤毛のアン』第14章の冒頭でアンが唄う歌。
 本文中には、歌の題名のみ記載。
 歌詞と楽譜は、エッセイストの奥田実紀さんから頂き、スキャナでデジタル化した。
 北米起源ではなく、たぶんイングランド、スコットランド、アイルランドのいずれかの歌と思われる。
 作者、どこの国の歌かなど、ご存じの方はご連絡下さい。(ゆ)

★カナダ・トロント公共図書館の梶原由佳さんから、歌の由来についてメールを頂きました。
 以下、メールから引用します。

_The Annotated Anne of Green Gables_ ed. by Wendy E.Barry, Margaret Anne Doody, Mary E.Doody Jones: ISBN 0-19-510428-5/Oxford University Press, 1997 によると、Nelly of the Hazel Dellの出典は以下のとおり。

"[Nelly of] The Hazel Dell" by George Frederick Root(1852), as found in the collection Heart Songs Dear to the American People(1909).
 CD版『赤毛のアン』全集(『赤毛のアン』を英語で朗読した音声CD/(株)ワールドファミリー発売/定価19万円くらい)を購入しました。
 それを聴いていたところ、アン役の声優として出演しているMegan Followsが、CDの中で、この「はしばみ谷のネリー」を唄っていました! かわゆい声と歌でした。(ゆ)

★楽譜を見たい方はここをクリックしてください。

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Montgomery Digital Libraryの歩み
1997.7 プレ開館。最初は、
COBBLER KEEZAR'S VISION by John Greenleaf Whittier
CURFEW MUST NOT RING TO-NIGHT by Rosa Hartwick Thorpe
NELLY OF THE HAZEL DELL楽譜も)の3作を掲載

1997.7.20 開館
「モンゴメリ・エレクトロニック・ライブラリー」に寄せて(松本侑子)
The Maiden's Vow by Baroness caroline Nairne Oliphant
「はしばみ谷のネリー」の試訳と解説、を追加

1997.8.1 カウンターを設置

1997.8.15
COBBLER KEEZAR'S VISIONの解説と、「はしばみ谷のネリー」の由来を追加

1997.9.4
AMONG THE HILLS by John Greenleaf Whittier を掲載

1997.9.7
CURFEW MUST NOT RING TO-NIGHTの試訳と解説を掲載

1997.9.13
THE PALACE OF ARTPIPPA PASSESHOHENLINDENTHE LADY GERALDINEMAIDENHOODの5作を追加

1997.9.16
THE LADY GERALDINEの解説を掲載

1997.9.19
DINBURGH AFTER FLODDENを掲載

1997.10.1
LANCELOT AND ELAINEを掲載

1997.10.18
THE VISION OF SIR LAUNFALTAM O' SHANTERを掲載

1998.6.1
MARMIONを掲載

1998.6.3
MARMIONを一部修正

1998.12.7
MARY, QUEEN OF SCOTSほか、5作品を掲載

2000.4.25
THE SIEGE OF VALENCIAを掲載

2000.6.2
EVELYN HOPEを掲載

2000.7.17
ELEGY WRITTEN IN A COUNTRY CHURCH-YARDを掲載

2000.10.31
ソケリーはいかにして雌鳥に卵を抱かせたかを掲載

2000.12.14
朝の往診ジェノヴァの夜の一場面を掲載。

英詩フォトコピー:茅原泰子、英文テキスト化:山口政幸、解説:松本侑子、ホームページ制作協力:鈴木康之
ご意見・ご希望・ご感想のメールは、office-matsumoto@mba.nifty.ne.jpまでお寄せください。
赤毛のアン電子図書館松本侑子ホームページ