第24章　預言者は地元では信用されないというが (6)

「おや、ジョン・ヘンリー・カーターが来るよ」マリラが言った。
　ジョン・ヘンリー少年はつもった雹をふみわけて歩いてきたが、おびえながらも、なんだかにやにやしていた。
「こりゃあまた、ひどいことだね、カスバートさん。お宅がみんなご無事かどうか、ハリソンさんに見てこいって言われたもんで」
「誰も死んじゃいないよ」マリラは大まじめで言った。「家も納屋も壊れなかった。ハリソンさんとこも、ご無事だったかい」
「それがね、無事とは言えないんだよ。雷にやられてさ。稲妻が台所の煙突に落ちて、煙突をつたって下りてきたんだよ、ジンジャーのカゴをぶっ飛ばしたあげくに、床に穴をあけて、地下室まで落ちたんだ」
「ジンジャーはケガをしたの？」アンがきいた。
「ああ。大ケガをして、死んでしまったよ」

　後でアンは、ハリソン氏を慰めに行った。するとハリソン氏はしょんぼりと食卓にむかい、震える手で、色鮮やかな羽をしたジンジャーの亡骸をなでさすっていた。
「かわいそうにな、ジンジャー、アンに悪態をつくことも、もうないんだよ」
　アンは自分がジンジャーのために泣くことがあろうとは想像したこともなかったが、涙が後から後からこぼれた。
「わしにはジンジャーしかいなかった。それなのに、死んでしまったよ……。ああ、これしきでこんなに悲しむなんて、わしも馬鹿げた老いぼれだ。何ともないふりをするよ。わしが黙ったら、お前さんはお悔やみを言うつもりだろうが、それはやめとくれ。慰めの言葉なんかかけられたら、おいおい子どもみたいに泣いちまう。恐ろしい嵐だったな。これで、もう誰もアンクル・エイブを笑わなくなるさ。エイブじいさんが今まで来る来るって予言したのに来なかった嵐が、全部まとめていっぺんに来たみたいだ。驚いたことに、どうやって日にちまでドンピシャリと当てたんだろう。いやはや、この家のひどいありさま。急いで板切れを探してきて、床の穴をふさがにゃならん」

　嵐の翌日、アヴォンリーの人々は何も手につかず、おたがいを見舞いあっては被害のほどを比べてすごした。街道は雹にうもれて馬車で行き来できないので、歩くか、馬に乗るかだった。郵便も遅れて届き、島全土から悪いニュースがもたらされた。家々が落雷にあい、死者、負傷者も出ていた。電話と電信は大混乱し、外で風雨にさらされた若い家畜は大半が死んだ。

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『アンの青春』モンゴメリ著、松本侑子訳
（集英社刊、2001年10月発行、2000円）より引用
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